ICUは耐性菌や様々な感染症の入り口になることは、ご存知の通りです。健常者は少なく、耐性菌による感染症発症のリスクが高い患者がほとんどであり、日頃から感染管理に対しての意識付けが大切です。
最近、当ICUでの感染対策を見直して、改めて感じたことは
①「分かっている」「やっている」と自分で思っているほど、十分な対策ができていない。
②目にみえない相手だからこそ、十分過ぎるほどの対策をしなくてはならない。
③クリティカルケア領域の医療者たるもの、意識の改善が必要。
ということでした。
一般的な標準予防策はみなさん周知の通りですので省略いたしますが、以下のデータをみると・・・怖くなりますね。適切な感染対策をやらなければ、どこまでも感染伝播しそうです。
また、院内感染の80%が接触感染でうつると言われており、経路別の感染を考慮すると、私たちの日々の注意でかなりの感染が防げそうです。
皆さんはご存知と思いますが、手袋は100%汚染を防げるものではありません。MRSA保菌者のモーニングケアを行なうだけで65%の医療者の服が汚染されている(Infect Control Hosp Epidemiol 1997;18:622)、MRSA/VRE保菌者の診察をした医師の白衣は69%の確率で汚染されていた(SHEA Annual meeting April5-7 1998;Abstract S74;52)というデータがあります。手指衛生はもちろんですが、適切なタイミングでのガウン・エプロンの装着も大変重要だと考えさせられます。
ちなみに「手指衛生を行なわない原因」を調査すると、
①擦式アルコール製剤や手洗いシンクへのアクセスが悪い
②手指衛生実施に対するデータの収集と報告の欠如
③手指衛生に対する責任感がない、適切なタイミングで指導されていない
④手指衛生の重要性を強調しない組織文化がある
⑤指導が不十分で効果的でない
⑥両手がふさがっていて手指衛生が行えない
⑦手袋着用によって手指衛生が阻害される
⑧手袋着用していれば手指衛生が不要と認識している
⑨つい忘れてしまう
⑩多忙で手指衛生に集中できない
という興味深いデータがありました。
当ICUで徹底した対策を実施した結果、感染予防策の実施率はかなり改善し、感染予防に対するスタッフの意識も高まっています。今後も高い意識を持ち続けることが重要だと感じています。
みなさんの施設でも、感染に対する意識が高まっている今、改めてクリティカルケア領域での「感染予防」について見直してみませんか? そして、患者さん・ご家族、周囲の職員を感染から守りましょう!
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