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koccn2014

column(No.22) 悲しんでいる家族にどう関わったらよいですか?こう聞かれたら何と答えたらよいでしょう。

 『悲嘆とは、その人にとって重要な人や物、立場、役割などの実際の喪失、予期的な喪失、または知覚した喪失に対して体験している心理的、身体的、社会的および行動上の自然な反応の過程である(日本看護科学学会,2011)』と定義されています。想像するだけでも、辛い気持ちを感じます。


 悲嘆というと、嘆き悲しんでいるというイメージを持つと思いますが、悲嘆の現れ方は人や背景、その人との関係性によって異なります。悲しみ・気分が落ち込むなど心の反応だけでなく、眠れない・食欲がないなど身体的な反応や日常生活の行動変化、スピリチュアルな変化など、複雑に様々な反応が見られます。実際に臨床で、「怒り」の感情にあったり、「この状況を受け入れたくない」という否認や「見るのが辛い」という現実逃避などの場面をみたことがあるのではないでしょうか。


 悲嘆の種類には、予期悲嘆・通常の悲嘆・複雑性悲嘆があります。予期悲嘆は死を想定して実際の死別が起こる前から生じる悲嘆で、患者と家族両方が経験し患者の死によって終了します。通常現場で遭遇する悲嘆の多くが予期悲嘆です。


 具体的に悲嘆ケアには、予期悲嘆の促進、ニードの充足、意思決定支援などがあります。一部を挙げてみましたので表をご参照ください。



 クリティカルケア領域では、終末期までの時間が短く、また患者・家族が十分に会話を出来ない場合もあり、予期悲嘆を十分に行う時間が短いという特徴があります。また患者家族との関係性が構築されていないという特徴もあり、私たちは、患者・家族と初めて関わる時から、積極的に関係性を構築することが要求されます。患者や家族の背景を把握し、これまでの生き方や価値観、どのような最後を迎えたいのかを尊重し、患者や家族にとってよりよい最後を迎えられるよう支援する必要があります。とはいえ、限られた時間の中で信頼関係を構築することは容易ではありません。ですが信頼関係は必ずしも関わった時間の長さだけで築かれるものではなく、心理的に不安定な状況や危機的状況にあるとき、人は他者からの援助を受け入れやすいという特徴があります。看護師の丁寧な関わりと適切な接遇は信頼関係の第一歩です。そして関わりの中でコミュニケーション技法を駆使し、患者家族と真に向き合う事が重要です。


 家族ケアは難しい、と感じる場面も多いですよね。上記したように、患者との関係性や家族自身が置かれている状況、感じ方や考え方によって、ケアのあり方を考える必要があることもその一因と感じます。だからこそ、チームで情報を共有できるよう記録に残し、また様々な意見の中でより良いケアについてディスカッションしていくことが重要です。当院では毎日のラウンドカンファレンス時に、PICS/PICS-Fの視点で問題点をディスカッションするようにしています。これだけでもみんなが家族に対して意識的に情報を取るようになり、さらに意見交換ができるようになっています。


 大切な人を失くした後の家族が、複雑性悲嘆に陥らずその経験と共に歩んでいけるよう、予期悲嘆の時期をしっかり家族と向き合える看護師でありたいと思います。    


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